薄利多売ビジネスの妙技

薄利多売ビジネスの妙技

価格優位性を確保して小さく始めて大きく花開く戦略のキモを考察してみた

薄利多売ビジネスか高利少売ビジネス

世の中には、大きく分けて2つの商品属性があります。

「説明しなくても売れる商品」と「説明しないと売れない商品」。

大手企業は前者を扱い、中小零細企業は後者を扱います。

前者の代表的な商品カテゴリーは、トイレットペーパーなどの日用品や生成食品などの日配品で後者はそれ以外です。

つまり、薄利多売ビジネスか高利少売ビジネスかの違いがある訳ですが、

起業時には高利少売ビジネスで種銭を稼ぎ、薄利多売ビジネスで事業を拡大させていくロードマップを描くことこそ大手企業へと変貌する大切な考え方です。

他方、起業時に薄利多売ビジネスに手を染めてしまうと、なかなか手残りが少なく、”貧乏ヒマなし”の状態に陥ることが多い傾向にあるものの、”あること”に重点を置くことで多くの消費者から支持される薄利多売ビジネスで右肩上がりの成長を見せる新興企業も存在します。

その”あること”とは?

1.商品コンセプトが秀逸な商品
2.価格戦略が秀逸な商品

1.は、特別な品質や機能が備わっている訳ではないのに消費者の心の琴線を捉えることができる考え抜かれた「コンセプト」をもっています。
2.は、1.と同じように特別な商品ではないものの、価格の優位性が保たれた「買いやすさ」をもっています。

本日は、「2」にフォーカスした薄利多売ビジネスについて深堀りしていきます。

需要の価格弾力性

2021年の後半から世界を席巻しはじめたインフレの波は、資源高や円安という荒波に豹変しながら私たちの生活に大打撃を与えています。

2022年7月時点で値上げされた食品は、少なくても1万円を超え、値上げ率の平均は13%を超えています。

2022年10月に入り、更なる値上げ商品も増え、多くの人が物価上昇を日常的に感じているはずです。

小売企業にとって死活問題となるのは…

代替可能な類似商品が多いほど価格弾力性が高まることです。

つまり、わずかな値上げをしただけでも他社の安い商品に乗り換えられてしまうリスクが高まるということです。

これを「需要の価格弾力性」と呼びます。

計算式は、「需要の変化率÷価格の変化率」で算出でき、仮に商品の価格を10%値上げした場合、需要の減少が5%であれば価格弾力性は0.5。この数値が1.0よりも小さければ、短期的にみた売上は向上するという考え方です。

要は、価格はどこまでなら上げても他社商品にスイッチされることなく自社商品を選び続けてもらえるか?

を知ることが小売企業にとってインフレ時代に最も必要なスキルです。

価格戦略のポイント

多くの小売企業が価格を決める際には下記のいずれかの方法で価格選定を行っているはずです。

・「コストプラス・プライシング」
・「競争価格モデル」

コストプラス・プライシングは、単純に原価に対して一律の利益を上乗せした価格を販売価格にする方法。
デメリットは、インフレ時代には総じて値上げの印象を消費者に強く与えてしまう点です。

競争価格モデルは、競合商品の価格をモニタリングしながら最安値をキープする方法。
リピーターの離脱を防ぎ、新規顧客の獲得もしやすくなるメリットの半面、売れ続けないと維持できない価格戦略ともいえます。

そこで、考えられるプライシング戦略が

「キーバリューアイテムと値上げ品目をセパレートした価格戦略」です。

この戦略は、集客商品はロープライスで攻めの価格帯でラインナップし、それ以外の商品はミドルプライスからハイプライスに値上げすることで全体的な利益を確保する戦略です。

但し、昨今のように毎月インフレの波が押し寄せて価格調整作業が多分に生じる局面では、なかなか手作業で価格の調整をすることは難しい。

現在では、このような小売店主のニーズを叶える手段が続々と提供され始めています。

モノは使いよう

例えばAmazonマーケットプレイスで出品している小売企業は、販売価格によって商品の売れ行きが劇的に変わるリアルをよく理解しているはずです。

Amazonセラーにとっては、価格の微調整は日常的な作業のひとつですが、

自社商品と同じカテゴリーに属する競合商品を5万SKUを登録しておき、競合商品の価格変動に合わせて再価格設定の作業を自動化してくれる破壊的なツールなんかも登場してきています。

つまり、このツールを使えば

・自社商品が耐えられる最大の値下げ価格を維持しながら、競合に競り負けない「利益が残る自社商品毎の競争価格」を自動調整(オートパイロット機能)

することが可能になります。

また、時期がズレてできるだけ早く在庫処分したい商品に対して、手数料を差し引いても損が生じないギリギリの価格を自動算定する機能もあります。

月額28.95ドルのコースで100SKUまで登録が可能です。

見落とされがちな価格選定

一部の顧客層を除けば購買に最も影響力を与えているのは、「価格」であることを忘れてはいけません。

特許を取得した商品であったり、創業が古く時間のエイジングによって信頼やブランド力が高い企業の割合は少なく、ほとんどの企業は競合と同じような商品を扱っています。

つまり、「商品コンセプトが秀逸な商品」を開発段階から意識して作られた商品でない限り、購入者に最もインパクトを与えることができるのは残念ながら価格でしかありません。

逆に言えば、商品コンセプトが作りこまれていないカテゴリーであればコンセプトから商品開発を行う「マーケットイン開発」をすればいいし、秀でた商品コンセプトが作りずらいカテゴリーであれば価格戦略で差別化できるということでもあります。

ほとんどの企業が収益の柱としている売り物には、

1.商品コンセプトが秀逸な商品
2.価格戦略が秀逸な商品

の両方が備わっている訳ではありません。

商品コンセプトをどう仕上げていくのかは、長年の経験やスキル、センスが必要ですが、価格戦略はツールの導入ですぐに結果が出やすい施策のひとつです。

あなたは、どのようなアプローチで競合他社との競争に打ち勝ち、利益を確保しようと考えていますか?

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