「狙ってバブル前に種をまく」研究シリーズ(5)
ポートフォリオ設計に纏わる保守的な運用と積極的な運用の違いについて考察してみた
富裕層や超富裕層の定義は様々ですが、この記事では、個人の現金で50億円以上を保有する人を超富裕層と定義した上で、それらの人達がどのようなポートフォリオで資産運用しているのかについて触れたいと思います。
約50億円のポートフォリオリオ
資産を多く抱える人、特に会社売却などで多額の現金を円で保有する人は、
・円預金から適切に資産分散をしたい(リスクヘッジの観点から)
・資産運用利回りは5%前後を死守したい
・役員報酬に代わるインカムゲインを得たい
の3つの絶対的な資産運用目標があったりします。
ある資産管理会社が運用しているポートフォリオ(約50億円)は以下の通りです。
—以下、金融資産
∟日本株式:1億円
∟先進国株式:2億円
∟新興国株式:1億円
∟先進国債券:25億円
—以下、実物資産
∟オルタナティブ(ヘッジファンド):4億円
∟国内不動産:40億円
∟国内ローン:25億円
∟コモディティ(金):1億円
∟コモディティ(その他→原油や鉱物などの価格に連動する資産):1億円
流動性が高い流動資産と流動性が低い実物資産の割合は、4:6です。
外貨比率は、日本のインフレ懸念(財政リスク)を考慮して、58%。
株と債券の比率は、11%と73%。
このポートフォリオ運用から得られる主なリターンは、
・先進国債券からのインカムゲイン=1億5000万円(25億×年利6%)
・国内不動産からのインカムゲイン=6000万円(40億×グロス利回り4.5%-元利返済)
つまり、役員報酬に代わるインカムゲイン収入は、約2億円です。
プライベードバンキングやプライベートバンクでも前述のようなポートフォリオを組み、保守的な運用を行うところがほとんどですが、以前の記事でも解説した通り、積極的な運用で資産を倍々にしたい人は、オルタナティブ投資は、ヘッジファンドではなく、新興国市場の現物資産に投資をする必要があります。なぜなら、バブルをトレースすればご理解いただける通りハイリターンが見込めるからです。
もうひとつ重要な示唆としては、不動産への投資です。やはり、昔も今も、そして未来永劫、不動産への投資は信頼性が高く、保守運用であれば国内不動産、積極的な運用であれば海外不動産です。この点も以前の記事の通り、バブルをトレースしたハイリターンを目的に運用する場合は、新興国の不動産への投資は必須です。
国債の買い方
前述の通り、ハイリターンを目的とした運用の場合、新興国への投資は必須です。
その場合、資産運用を他社に任せるだけではハイリターンは見込めません。自分自身の”嗅覚”と”知識”を総動員して新興国の不動産や新興国のオルタナティブ資産を漁っていかなければいけません。これまた以前の記事の通りミャンマーの絵画やエジプトの不動産を検討に入れることは極めて有意義です。
そして、資産運用の柱のもうひとつは、「先進国債券」です。
先進国債券とは、国が出す債権のことですが、金融リテラシーで一番差が出るところが「債権」の知識です。
特に外国債券の基礎知識が重要です。
ある国に対してドルでお金を貸してドルで帰ってくるというのが外国債券です。(米ドル取引です)
メリットは、
・毎年安定した外貨建ての利息収入が得られる
・株式よりも値動くが安定している
・目標リターンは、年5%未満
※個別債権には最低でも700万円が必要
株の投資は、値動きが大きいためファンドで運用するのがポイントであるのに対して債権は値動きが安定しているため、個別銘柄
で運用するのがポイントです。個別銘柄とは、個別の国ということです。
債権を購入する場合、格付けを参考にして購入する国を決定します。
例えば、世界第2位の格付け会社である「ムーディーズ」が発表している発行体格付けでは、信頼性が高い順に並べると以下の通りです。
Aaa:アメリカ、オーストラリア、ドイツ、スイス、シンガポール
Aa:イギリス、香港、フランス
A:日本、中国、メキシコ
Baa:タイ、フィリピン、南アフリカ
Ba:ベトナム、ブラジル
B:トルコ、ギリシャ、エジプト
Caa-C:アルゼンチン、ウクライナ
信頼性が高いほど、利回りは低くなるのがポイントです。
最も信頼性が高く、利回りが低いのがAaaの国々です。
債権の最大のデメリットは、デフォルトです。
このデフォルトのリスクをマネージするためには、どのレベルの信用性のレイヤーまでを投資対象にするかです。
答えは、前述の「A(シングルエー)」(を含む)より上の国々に投資することです。
なぜなら、「A」は、10年間で2%のデフォルトのリスクがある一方、「Baa」は、10年間で12%のデフォルトのリスクがあります。
その差は、4倍です。
つなわち、国債投資においてどの国に投資するかは明白であり、以下の通りです。
・アメリカ
・オーストラリア
・ドイツ
・スイス
・シンガポール
・イギリス
・香港
・フランス
・日本
・中国
・メキシコ
ちなみに「Ba」のデフォルトの確率は10年で12%であり、投資非適格債といわれていますが、これまで記事で紹介している通り2044年に生産年齢人口がピークを迎える南アフリカが「Baa」に含まれています。
南アフリカは、生産年齢人口比率と多消費年齢人口比率の両方が高まる国のひとつです。
エジプトは、「B」でリスクが高い一方、利回りが高く、デフォルトの確率は10年で32%です。2041年に生産年齢人口がピークを迎えます。
(機関投資家や年金機構が投資をするのは、「Baa」以上です)
つまり、ミドルリスク&ハイリターンの年利回りの利息収入を得るには、
・「B」エジプト(生産年齢人口比率と多消費年齢人口比率のピークは、2041年)
・「Baa」南アフリカ(生産年齢人口比率と多消費年齢人口比率のピークは、2044年)
の国債への投資がデータ上から導かれる訳です。
基本的に債権投資は、満期を迎えたら再投資を行うのが原則のため、満期が異なる(償還年数の分散)債権への分散投資が必須です。
為替リスク
国債の取引は、米ドルが主体のため、為替リスクについての知識は必須になります。
国債(債権)は、円高リスクがあるため、二の足を踏んでいる方も多いはずです。
ポイントは、円高リスクがあるものの、リターン(インカムゲイン)があるため、複利運用することが得られる資産増と為替リスクをトータルで考えることが重要です。
つまり、どこまで円高を許容できるのか?という為替の損益分岐点を明確にすることが求められます。
運用利回り5%を複利で運用した場合のシミュレーション
運用年数:0年/資産価値:100.00/為替:140.00
運用年数:1年/資産価値:105.00/為替:133.33
運用年数:2年/資産価値:110.25/為替:126.98
運用年数:3年/資産価値:115.76/為替:120.93
運用年数:4年/資産価値:121.55/為替:115.17
運用年数:5年/資産価値:127.63/為替:109.69
運用年数:6年/資産価値:134.01/為替:104.46
運用年数:7年/資産価値:140.71/為替:99.49
運用年数:8年/資産価値:147.75/為替:94.75
運用年数:9年/資産価値:155.13/為替:90.24
運用年数:10年/資産価値:162.89/為替:89.95
このシミュレーションは、円が140円からスタートして
為替がいくらよりも円高にいっていなければ資産価値とトータルで利益がでるか?
を示しています。
見方は、例えば、10年後の為替が89.95円よりも円高が進まない場合は、利益が出るということです。
ここで考えていただきたいのは、今後、円高ドル安が89円まで進む可能性があるのか?
ということです。
可能性はゼロではありませんが、なかなか考えにくい円高水準です。
このことから為替の損益分岐点を明確にしておくことで高確率でリターンを得られやすいのが国債(債権)運用の強みといえます。
ちなみに6%強で運用できると税引後5%の利回り運用が可能になります。
約5億円のポートフォリオリオ
前述の通り約50億円の富裕層が運用するポートフォリオを例に解説してきましたが、最後により現実的な約5億円のポートフォリオをご紹介します。
現預金5億円のうち、4億5000万円を拠出
∟先進国債券:3億円
∟国内不動産:5億円
∟国内ローン:3億5000万円(頭金で1億5000万円)
このシンプルなポートフォリオで債権部分の運用成績は、
税引前:3億円×8.8%=2640万円
税引後:2640万円×80%=2112万円(個人ベースで運用しているため税金が20%のため、8掛け)
円安でアメリカの金利が高い状況では、利回りが8%を超え、毎年、外貨ベースで2112万円のインカムゲインを獲得できました。
劣後債やハイブリッド証券を上手に使うことで7~8%前後で運用できるのが、円安時代の恩恵です。
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