グローバルD2Cビジネス
市場分析によって異なるアプローチの方法について考察してみた
前回の記事(成功のカギは、売れる高額商品)で触れた通り、D2C企業における配送コストの高騰やCPAの悪化によって利益が出にくい状況が続いています。
本来、ネットビジネスのアドバンテージである損益分岐点の低さは、今や広告費の高騰によって失われつつあります。
そこでD2C企業の最新のトレンドをご紹介しながら今後の行く末にアテをつけていきたいと思います。
D2C企業のトレンド
2010年に眼鏡のD2Cブランドとして創業したWarby Parker(ワービー・パーカー)の例は、日本のJINSやzoffなども恐らく参考にしている展開手法だと思われるが、
あえてネット販売だけにこだわらずに実店舗でも販売を行う方式を採用しています。
アメリカでは眼鏡の価格が平均で400ドル以上であるのに対してWarby Parkerは95ドル~という安価な設定で業界改革をもたらしいますが、日本のJINSやzoffも同じような価格帯です。
(2022年2月現在では両社とも最安8800円~)
ネットで広く認知度を獲得した上でネットでも購入できるルートと実店舗でも購入できるルートを確保したことで「集客」と「コミュニケーション」の2つの要素をしっかりと強化できる意味でネット企業の実店舗化が進んでいます。
同社の顧客1人あたりの年間平均売上は218ドルで店舗家賃などの全経費を差し引くと実質利益は45ドル程度です。
恐らくJINSやzoffも同じような水準のはずです。
1つ売れると約6000円の利益になるビジネスですが、このブログを見てる方々はこのようなビジネスに旨みを感じますか?
実際にWarby Parkerの顧客1人あたりの獲得コストは27ドル(2019)→40ドル(2020)まで上昇し、営業収支では赤字の状況が続いています。
つまり、集客コストが年々、高騰する中、いかにして『顧客を囲い込みながら見込み客を増やすこと』が経営のカギになるということです。
この課題は、B2C企業すべてに投げかけられている宿題のようなもので、これに答えを見いだせない限り倒産のリスクを回避することはできません。
結論としての対処法は次の通りです。
実店舗作りのポイントは…
1.ショールーム機能を設ける
→新しい商品の発見、試用、専門家のアドバイスが受けられる機会を作ることで”緩い”コミュニケーションを促進することでユニークな商品体験を提供する。
2.オフ会機能を設ける
→同じ趣味や価値観を持つ者同士が対面で交流できる機会を作ることで顧客ロイヤリティの向上と新規顧客を増やす。
3.サードプレイス機能を設ける
→自宅でもない職場でもない第三の場所としての居心地が良い空間作りで自然と顧客が引き寄せられるスペースを提供することで顧客ロイヤリティの向上と新規顧客を増やす。
4.バックアップ機能を設ける
→購入した製品の寿命を延ばすためのサポートを提供することで顧客との関係を一度限りではなく継続的なものにすることでLTVとは「顧客生涯価値(Life Time Value)」を高める。
つまり、大手企業が現在取り組んでいる顧客との接点(コンタクトポイント)の強化をすることで『顧客を囲い込みながら見込み客を増やすこと』が実店舗を持つすべての企業のマストなタスクになっていくということです。
アプローチは売り先によって異なる
前述までの内容は、主に市場が成熟した商品や国・地域で販売するために必要なタスクです。
飽和した市場ではゼロサムゲームの勝者にならない限り生き残る道はありません。
つまり、成熟市場ではニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)の両方を満たす必要があるということです。
では、未成熟市場ではどうでしょうか?
満たす要件は、ニーズ(必要性)だけです。なぜなら、必要なモノが”まだ”揃っていないからです。
この条件を正確に理解できると、売り先によって戦術は異なることが容易に想像できます。
もし、海外の未成熟市場が売り先であれば、ニーズ(必要性)に応答する形で商品を開発ないしは仕入れをした上で大量にグローバル販売を行えばいいわけです。
ヒントは…
日本で昔から売れ続けているロングセラー商品を参考に開発を行い、未成熟市場へ販売を行うグローバルD2Cビジネスこそが最もシンプルなビジネスといえるでしょう。
あなたなら、成熟市場と未成熟市場のどちらを販売先にしたいですか?