世界のマネーはどこへ向かうのか

世界のマネーはどこへ向かうのか

銀行の破綻から見る政策金利の上下が及ぼす波及効果について考察してみた

先日、アメリカのシリコンバレー銀行(SVB)が破綻したことで「リーマンショックの再来」と危惧されている世界マネーの動向。

本日の記事では、富裕層のマネーがどこへ向かうのか?についての予測記事です。

なぜ、SVBは破綻したのか?

スタートアップでユニコーン企業の輩出が多いアメリカでの中でも特にスタートアップ企業へのサービス強化を高めていたのがSVBです。

2022年に株式上場(IPO)したスタートアップ企業の実に44%が同行に預金口座を保有しています。

なぜ、約2社に1社のスタートアップ企業が同行の口座を開設するのか?その理由は…

・法人口座の開設がカンタン
・インターネットで管理できる

この2つのメリットがスタートアップ企業に好まれているからです。

さらに、SVBは「Venture Debt(ベンチャーデット)」という直接融資も行っているため

IPOやM&A(企業売却)をゴールとするアメリカのスタートアップ企業にとっては、一元的に資金を管理するために都合がいい金融機関でもあります。

つまり、同行にすべての資金を預ける企業が多いということです。

このことが今回の破綻要因のポイントになります。

アメリカの銀行預金には、下記のように2種類の預金形態がありますが、

1.決済用として使われる無利子の「要求払預金」
2.定期預金などの「利子付き預金」

SVBは、「1.」の割合が多い特徴のある銀行でしたが、政策金利の上昇により「利子付預金」に資金を移動する企業が増えたことが、SVBの利払い負担を急激に高める結果になりました。

金利が上がれば預金に対する利子が上がるため、自然発生的に「利子付預金」へ資金移動をする企業が増えるのは当然です。

しかし、直接的なSVBの破綻理由は、利払い負担ではなく、預金の引き出しが相次いだことです。

銀行というのは、企業の預金を運用することで企業に貸し出すお金を生み出し貸し出したお金に利息をつけることで売上を上げます。

その運用に際して、SVBはアメリカの長期国債を中心としたポートフォリオを組んでましたが、政策金利の上昇により国債価格の下落要因が高まりました。

SVBの預金者の多くも預金額の約半分を長期の米国債で運用していたため、資金の目減りを危惧した預金者(企業)がSVBから預金を引き出す事態に。

要は、SVBの売上の源泉である運用資金(企業の預金)を失うことになり、お金を生み出すことができなくなったということです。

これが破綻の理由です。

教訓

地球上で一番安全な証券と見なされている米国債への投資であっても、金利の上昇によってその地位を失ったのが本件の本質的な教訓です。

では、なぜ、政府主導(実施は中央銀行)で政策金利を上げると思いますか?理由は…

過熱した景気を抑えるためです。要は、バブルになることを抑えるためです。昨今のアメリカの利上げの場合は、インフレ(物価の上昇)抑止が目的です。

一方、政策金利を下げる理由は…

停滞した景気を浮揚させるためです。

つまり、「利上」や「利下げ」は、経済を安定化させるために行う極めて市場への影響力が高い政策といえます。

政策金利のマジック

ここまで読まれた方は、ある事実にお気づきではないですか?

過熱した景気を抑えるために政策金利を上げる政策がとられるということは…

1.景気がどんどん良くなっている時は、政策金利を上げる政策はとられないということです。

2.景気が停滞している時は、政策金利を下げる政策がとられるということです。

「1.」は、政策金利を上げる政策がとられないということは逆説的にいえば、金利が安定しているということです。

つまり、債券価格が安定するということです。

国債運用をする場合、価格が安定するということは「安定した資産運用」ができるということであり、長期国債(10年)が選択肢に上がります。

「2.」は、政策金利を下げる政策がとられるということは逆説的にいえば、景気が悪いということです。

つまり、日本のように長い間、景気が上向かない国の国債運用をする場合は、中長期債(5年満期)が選択肢に上がります。

国債というのは、国が発行している債権であり、国が破綻しない限りリスクはない投資先です。

今一度、国債について関心を持ち、より安定的な資産運用の手法を確立することが中長期的な資産形成に成功に不可欠です。

あなたなら、どのような資産運用の方針を立てて、大切な資産を増やしていきたいですか?

ちなみに、SVBの一件によって富裕層マネーの10%が暗号資産に流れたといわれています。

もしかしたら、今年のどこかのタイミングでもう人波くるかもしれません。

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