越境eコマースの未来
Amazonやユニクロが決して安泰ではない未来の小売業界を考察してみた
私たちの身の回りにあるモノの多くは、中国で生産されています。
世界で流通している中国製の商品比率は、
・スマートフォン&タブレット⇒70%
・家電製品(テレビ/洗濯機/冷蔵庫)⇒50%
・アパレル⇒30~40%
であり、現在、中国企業の「SHEIN」や「TEMU」が越境eコマースによって世界各国のサプライチェーンを崩壊させようとしていることをご存じですか?
本日は、eコマースの未来について解説します。
先進国の罪
あるアメリカの調査会社から
2021年時点で世界のオンライン小売業者上位10社の中で流通総額の7割を中国企業が占めているという驚くべき事実が明かされました。
これまで先進国が「世界の工場」として中国人の安い労働賃金を背景にした低コスト製造に頼り切ってきた”ツケ”が今現在、小売企業をはじめサプライヤーを含むサプライチェーンの存続を脅かす未来へと突き進んでいます。
日本国内では、ヤフーショッピングや楽天市場、外資系ではAmazonがシェアの7~8割を獲得していますが、
その中でもAmazonは、中国製の安さに支えられている一面があり、日本人も多くの人が利用しているはずです。
そのAmazonですら脅威を感じる企業が2社、頭角を現してきています。
SHEIN(シーイン)
まず、1社目が「SHEIN」
中国南京市を拠点とし、世界の衣料工場が集まる広州から仕入れた製品をSHEINブランドのアパレルとして欧州・米国・オーストラリア・日本などの消費者にオンライン直販している企業です。
1日に追加される新商品は、なんと5000~8000点。
2021年には売上高でH&MやZARAを追い越してしまいました。
レディースのブラウスやカジュアルドレスが1000~2000円の価格帯と激安でZ世代を中心に支持を集めています。
TEMU(ティームー)
もう1社が、「TEMU」
日用品・電子製品・アパレル・美容品・カー用品・玩具・工具など、250カテゴリー以上の商材を海外の消費者に直販している企業です。
Amazonと比較しても30~50%以上安い価格で販売しているのが最大の特徴です。
中国製の電動歯ブラシと交換ブラシのセットをAmazonと比較すると…Amazonが4000円に対してTEMUは1000円で売られています。
新・グローバル
上記の企業の特徴としては、Amazonのように例えば日本支社などをおかずに現地から国際発送する点です。
AIが輸送ルートを最適化する物流システムに多額の投資を行っており、世界の航空会社や海運会社とも大口契約を交わすことで荷物1個あたりの配送コストを下げています。
ZOZOアパレルの前社長の前澤氏の”物流を制する者は小売りを制す”
の言葉の通り、精鋭の越境eコマース企業は、バックヤードの強化によって世界の小売業界を変革しようと試みています。
この動きは、新しいグローバル展開のアプローチともいえます。
ゲームチェンジャー
上記の通り、価格面においてはすでにAmazonよりも破格の価格を実現できているのが「TEMU」
そして、アパレルでは最重要タスクであるトレンドの先取りにおいては、それを得意とするユニクロよりもタイムリーなトレンドの把握→生産を実現できているのが「SHEIN」
SHEINでは、毎日生まれている膨大な流行の兆候を自動的に発見できるアルゴリズムを組んでおり、新たなファッショントレンドの発生からわずか数日間でそのデザインを模倣した服を商品化する生産体制を約6000社の衣料工場との提携により築き1日に5000点以上の新作商品を少量ずつ(最小50着程度)販売するビジネスモデルを実現できています。
もはや、Amazonやユニクロを世界有数のマーケットリーダーに押し上げたバックヤード機能を遥かに超えています。
まとめ
皆さんも薄々感じていることと思いますが、
安さで中国に勝つことは決してできません。
中国では景気もよく、バックヤードの仕組みを作る大きな投資もすぐに実施でき、安く売ることで最大公約数を獲得するための条件を容易に手に入れることが可能です。
このような状況を作り出したのは言うまでもなく先進国です。
これからの小売業界は、確実に二極化します。
「そこそこ安くてそこそこ品質がイイもの」と「一生、愛用したいと思えるイケてるもの」との二極化です。
あなたのお家にあるものは、中国製ですか?それとも日本製ですか?
今一度、自分の感性を顧みて、今後、世界の人々がどのような消費意識でどのような購買行動をするのか想像してみてください。
そこにビジネスチャンスが隠れているかもしれません。