ビジネスアイディアのリサーチの真髄
儲けのアイディアの検証を進めていたら真に儲かるビジネスの骨格が見えてきた件
めぼしいビジネスアイディアを見つけた時、あなたはどのようにそのアイディアの可能性を探りますか?
本日は、コスメビジネスを例に思いついたビジネスの再現性を知る方法について解説します。
再現性の確認
もし、あなたがコスメをD2Cで販売するビジネスを立ち上げようとした場合、
どのようなステップで”儲けのニオイ”を感じればいいでしょうか?
それには、次のようなステップで企業のリサーチをしてみてください。
※あくまで一例です
まずは、ベンチマークする企業を選定します。
D2Cといえば北の達人コーポレーションだと思うので決算書から主なデータを抜き取ります。
∟売上高:133億円
∟経常利益:14.3億円
∟当期純利益:10.0億円
∟従業員数:238人(内パートタイマーは21人)
∟売上の90%が自社EC経由で購入し、70%が定期購入による収益です。
∟顧客層は、40代以上の男女
∟1ヶ月で商品を使い切る設計で商品開発
∟商品数(SKU):31個(実際は25商品で6商品はセットなどの派生商品)
※ヘルス&ビューティーケア関連事業のデータであり、連結決算は別。つまりこのデータは、北の快適工房というブランド単体のデータです。(2023年3月1日~2024年2月29日)
※ちなみに当期純利益というのは、営業利益から納めなければいけない税金などすべて差し引いた後に残るお金のことです。
次に、再現性を調べてみます。
∟1商品あたりの売上:4.2億円
∟1商品あたりの当期純利益:0.32億円
∟上記の数値を達成するための出荷個数:9.5万個/年(=1日260個出荷)
∟広告運用指数:
・CPC(クリック単価)→90円(ディスプレイ広告)
・CVR(コンバージョン率)→3%
・1日のCV→260CV
=1日の広告費は、78万円(1ヶ月で2379万円。3ヶ月分をプールしておきたいので71370000円)
∟発注在庫:
=最安で製造できるコスメ(500円程度)の3ヶ月分をプールしておきたいので11895000円
広告費と発注費を合わせると、85032000円です。(①)
あなたが約9千万円の資金が調達できる前提でさらに深掘りしていきます。
まず、1日260個売らないと再現性を担保できません。
なので、1日260個売れそうなカテゴリーを決めます。(②)
続いて、CVR3%をとれるLP制作&広告運用ができる代理店を死ぬ気で探します。(③)
①②③のすべてをクリアできたとき、北の快適工房のように当期純利益ベースで7.5%程度の利益を確保できるビジネスを再現できます。
ちなみに北の達人コーポレーションの当期純利益率の推移は、
2020年2月期: 19.56%
2021年2月期: 14.97%
2022年2月期: 14.11%
2023年2月期: 3.49%
2024年2月期: 6.78%
利益率の推移は、
2020年2月期: 28.88%
2021年2月期: 21.91%
2022年2月期: 21.89%
2023年2月期: 5.19%
2024年2月期: 9.88%
※数期前から連結決算になっているため、数値が上下します
「利益率29%」と一時話題になったのは、2020年2月の営業利益率(28.88%)からくるものです。
残念ながら年々、利益率も当期純利益率も下がってきています。
つまり、このビジネスモデルは限界がきているということです。
おそらく日本のコスメD2Cの自社EC運用が一番上手い北の達人コーポレーションをもってしても直近では利益率が10.0%を下回っています。
では、楽天やAmazonなどのECモールではどうか?
当該モールで売上No.1とかNo.2のブランドの利益率は、実は同じように10.0%を下回っています。販売価格は、単品で1500円、トリートメントとセットで3000円程度の商品です。
要は、3000~5000円弱の商品を広告を回して販売すると年々、利益が出ずらくなっているということです。
よって、
・商品数(ブランド数)を増やす
・リテール(ドラックストアなどの実店舗)の面を抑える
といった「数の原理」で戦うことを余儀なくされます。
コスメ市場は上位10社で5割を占め、残りの5割を約2990社によって形成されています。
つまり、リテール市場においても下記の上位5社で50%が占められているということは容易に想像できます。
1位:資生堂
2位:花王
3位:P&G
4位:コーセー
5位:カネボウ化粧品
残りの50%を下記の有名な企業を含む3000社ちかい企業がしのぎを削って棚割り合戦を繰り広げているのがリテール市場です。
6位:ロート製薬
7位:日本ロレアル
8位:ユニリーバ・ジャパン
9位:アルビオン
10位:ポーラ
11位:エスティローダー
12位:ファンケル
13位:ホーユー
14位:マンダム
15位:ディーエイチシー
16位:Kenvue
17位:オルビス
18位:ピアスグループ
19位:ミルボン
20位:LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)
21位:新日本製薬
22位:I-ne
23位:常盤薬品工業
24位:クラシエホームプロダクツ
25位:プレミアアンチエイジング
26位:牛乳石鹸共進社
27位:ロクシタンジャポン
28位:再春館製薬所
29位:ナリス化粧品
30位:日本アムウェイ
※ランキングデータは、2023年度版
これを見てあなたに質問します。
コスメをD2Cで販売するアイディアをこれ以上、深掘りしますか?しませんか?
私の考えでは、是非とも深掘りしてみてほしいです。
なぜなら、このような事実は、大手の土俵(ルール)で考えた場合、勝ち目がないのは明白ですが、視点を変えればチャンスはあります。それは…
年々、利益が出ずらくなっている理由は、
・年々、参入者が増えている
・それによって購入までの意思決定に有する時間が伸びている
・それによって広告費が増えている
です。
つまり、
参入者が増えない市場で高価格帯の商品を広告を使わずにクチコミだけで売るビジネス
をすれば高い利益率を維持したまま中長期的に成立するビジネスを維持することができるわけです。
そのような商品を死ぬ気で探してみてください。
コスメカテゴリーでいえば、レッドオーシャンであるシャンプーやスキンケアのカテゴリーではなく別のカテゴリーでも十分チャンスがあるカテゴリーが存在するかもしれません。
もちろんコスメにこだわる必要はありません。この記事(人がモノを買う理由)を参考に高価格帯で売れそうなカテゴリーをあなたの感性で探してみてください。